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楽曲の制作が終わったあとに、必ず行う作業に「MIX(ミックス)」というものがあります。DTMを行っている方は、SNSや各メディアでも、作曲のトピックよりも、ミックスのトピックの方を多く見ることがあるかと思いますが、そのくらい避けては通れない作業です。
その理由は、このミックスの工程を失敗してしまうと、どれだけ作り込みの良い楽曲だったとしても「リスニング体験」という点で、聴き手側にとってその楽曲のイメージ像全体を台無しにしてしまうと言っても過言ではないため、楽曲のクオリティーそのものを変えてしまうという重要な工程だからです。
しかし、ミックスにはその人特有のさまざまなやり方がありますし、そのあとには「マスタリング」という別の工程があり、その「マスタリング」でも「ミックス」と同じように、EQやコンプなどの同じエフェクトを使用します。そのため、
- 「ミックスって結局何をどうやったらいい音源になるの?」
- 「マスタリングとの違いって一体なに?」
という部分が曖昧になっている方も少なくないはずです。
そこで今回は、ミックスとマスタリングの違いをプロの目線から明確に区別し、それぞれがどういうものなのか、どんな点に気をつければいいのかを解説していきます!
初心者の方はもちろん、中級者の方も見直しとして本記事を活用し、基礎を覚えていくことで最終的なクオリティが段違いに跳ね上がります。ミックスの基礎知識とコツを詰め込んだ攻略ガイドになっておりますので、ぜひ今日からの楽曲制作に活かしてみてください!
ミックスとマスタリングの決定的な違い
「ミックス」と「マスタリング」は本来全く別の役割を持つものでしたが、現代では「音を綺麗にする」という点で、一緒だと捉えられることで、その境界が曖昧になってしまっています。ですので、元々の役割から比較しその後個々で解説。加えて、現代では何を最終目標とすればいいかを確認していきます。
まず先に、元々の役割ですがこのような違いがあります。
- ミックス:録音した音を原音に忠実に再現する
- マスタリング:複数の楽曲の音量を均一にし、質感などの最終調整を行う
それでは、なぜこのような違いが昔はあったかを個々で確認していきましょう!
①:ミックス=録音した音を原音に忠実に再現する
楽器や楽曲の録音は様々な方法で行われてきましたが、大まかに3つの歴史的な流れで区別することもできます。
- 蓄音機などで録音・再生をする
- MTR(マルチトラックレコーダー)やテープなどに録音した音を、レコードで聞く
- DAWが普及し、CDやストリーミングで聞くようになる
というような形です。ここで特に重要なのは、蓄音機/テープなどの「録音の時点でどうしても音の質が変わってしまうもの」があったことです。
現代では基本的に音が大きく劣化するというものはないので、音の劣化も「味の1つ」として楽しむことができますが、昔はやはり「できるだけ良い音=演奏時に鳴ってい音の質感」で聴きたいという思いが強くありました。これは現代でも基本的には同じですよね!
その劣化した音を「元の音質に戻す」ために
- Equalizer:イコールにするもの
- コンプレッサー:音の突飛な凸凹を「圧縮」し質感を整えるもの
などを利用して、より良い音で聴こうとしました。これが「ミックスの本来の役割」です。
ですので、現代でも「より原音を忠実に再現」という販売文句の機材などが高額で販売されていますが、それは、昔から使用されて信頼性のあるという意味だったり「各楽器が良いバランスで整っていれば必要の無い加工はしなくてもいい」という理由で高額という訳です。
②:マスタリング=複数の楽曲の音量を均一にし、質感などの最終調整を行う
時代は移り変わり「テープ・レコード・MD/CD」など、複数の楽曲を一つの媒体で聴ける様なシステムが普及していきます。その時、
- 楽曲①は音量が小さく、楽曲②は音量が大きい
- 楽曲①と②はスタジオ録音の整った質感なのに、③はコンサートホールで録音された全く別の質感
など、例は極端になりますが、このような違いがレコードやCDに入っている複数楽曲で音量や質感がバラバラだった場合、全部の楽曲を通して聴きにくいですよね!
この「複数曲が同時に収録できる媒体」で収録されている楽曲を違和感なく聞くために「最終的な質感や音量を整える」のがマスタリングの役割です。
ですので、同じEQやコンプを使用していても「原音を再現する」と「最終的な質感を整える」という全く別の役割があった訳です。
現代的に例えると....
これらは、現代の方には「写真」をイメージしてもらうのが、最も分かりやすい例えです。
- ミックス:構図や光量・シャッタースピードなどを駆使して、その被写体を様子が分かるように綺麗に撮ってあげるイメージ
- マスタリング:展覧会やSNS投稿のために、写真のサイズや最終的な色調やコントラストを調整するイメージ
厳密には、もっと言及したい細かい違いもありますが、このイメージを持っていただくことが先ずは大切なことになりますので、是非覚えておいてください!
では、ミックスとマスタリングの違いが分かったところで、次の章からはそれぞれのコツを解説していきます!
現代のミックスと絶対に最初に覚えておきたいミックスのいくつかのコツ
前の章ではミックス本来の役割を解説しましたが、現代のミックスは若干イメージが違います。スタジオでは同じ空間で一気に楽器を録音することもあるため、昔のような役割のニュアンスも含んではいますが、それでも基本的には昔と違い、現代では「音の劣化」はほとんど起きません。
また、現代ではPC音源と生録音の質の違いもありますし、ドラムセットなども個々の楽器にマイクを立て個別で録音することがほとんどのため「より綺麗にまとまった音」にするためにミックスを行うことが主流です。
そこで「より綺麗にまとまった音」にするために最低限覚えておきたいコツを確認し、その意味を個々に解説していきたいと思います!
①:楽曲制作・録音の段階
実はミックスは「万能の編集」ではありません。過剰なエフェクトの仕様や編集は聴き手側に大きな違和感を与えることになります。
最終的なミックスを良くするためのコツは、実は楽曲制作と録音の段階にあります。
- 過剰な編集の必要の無い、音色・音量のダイナミクス・ピッチで録音を行えているか
- 楽曲全体の周波数帯域がフラットになるような楽器構成で楽曲制作を行えているか
この点が良くないと、どれだけミックスをしても「音が馴染まない」「なんかスカスカに聴こえる」という状態になってしまいます。ですので、最終的なイメージから逆算した楽曲作りを行うのがプロの考え方の1つです。
パンクロックやメタルなどの「中音域があまりジャンル的に必要ない」といった、楽曲の特性によって「あえてその状態を作らなければならない」という場合を除いては、この2つを守るようにしてみてください。
②:ミックスの準備段階
ミックスを始める前に、気を付けて置きたい点がいくつかあります。それは
- PC音源などで製作したパートは必ずオーディオファイルに書き出してから作業をする
- マスタートラックの音量は±0dbから動かさない
- 各トラックは-12dbからスタートする
この3点です。
PC音源などで製作したパートは必ずオーディオファイルに書き出してから作業をする
この項目には2つの意味があります。
まず一つはPCの負荷を軽くすることです。ミックスではプラグインなども含めた多くのソフトを使用しますので、音源などの読み込みに大きな負荷がかかるものは全てオーディオにして作業することで、確認作業が早くなります。
2つめは「オートメーション」の書き込みはオーディオトラックでしか丁寧な調整ができないからです。
オートメーションは録音されたトラックに対して、左右パンや音量、エフェクトの一時的な量の変化を設定するための機能です。一見、PC音源でも「ベロシティーという強弱を表現する機能がついているよ?」と思うかもしれませんが、これは「各音1つずつ」の音量を調整するための機能です。
オートメーションではフェードイン・アウトなどで、余韻やアタックの管理も行うことができますので、特に「ブラスセクション・ストリングセクション」をよりリアルに聴かせるためにはこの機能は欠かせません。
ですので、まずはオーディオファイルに書き出し、取り込みを行ってからミックスをスタートします。
マスタートラックの音量は±0dbから動かさない
マスタートラックは全てのトラックの音量や質感を左右する、楽曲全体の司令塔です。
音は基本的に音量が大きい方が良い音に聴こえるという人間の耳の特性があります。そのため、音量が昼・夜などの環境の変化の際に、マスタートラックの音量を上げ下げしてしまうと、細かい音の質感の判断が付きにくくなりますので、この部分は必ず初期設定のまま行うようにしてください。
また、最終的な質感はマスタリングのタイミングで行うため、最終的な質感から逆算したいという場合以外は、ミックスの段階でマスタートラックにエフェクトを指す必要もあまりありません。この点は時と場合を見ながら判断してみてください!
各トラックは-12dbからスタートする
音には必ず「ピーク=これ以上音量を上げてしまうと音割れなどの劣化を起こしていまうよ」という「綺麗な音を保つための限界」が存在します。
音は基本的に「デジタル信号では±6db」「体感上では±10db」で音量が2倍変化します。ですので、音量調節の際にデフォルトの0dbから調整してしまうと、多くの音が「ピーク」を迎えてしまします。
最終的な音量はマスタリングで確保できるため、作業の段階では元の1/4の音量まで下げて、余裕を持ったバランス調整ができるように準備を行ってください!
③:ミックスで大事なこと
ミックスの際に「全体像が綺麗にならない・音が馴染まない」という経験は誰もがしたことがあると思いますが、その際に、エフェクト自体を変えたり、数値をいじっていませんか?
それも大切なことですが、実はその原因は多くの場合、エフェクトを整える前の段階が原因なことが多いです。その前の段階とは、
- フェーダー:音量バランス
- パン:楽器の左右の配置
この2点です。
極端な例ですが「他の追加楽器を使用しない本物のオーケストラ楽曲」や「全ての楽器の音色調整が完璧」の場合、基本的に音量とパンの調整がしっかり行われていれば、EQなどのエフェクトは使用しなくても十分に良い音源になります。
EQ・コンプ・リバーブなどはあくまで「より綺麗に馴染ませ・聴かせる」ための追加の要素です。
最初は、こんなことで本当に良くなるの?と半信半疑かと思いますが、筆者もこの点を見直したことで修業時代に格段に良くなったと言われたことがありましたので、この様で記載した①と②の項目を前提に、フェーダーとパンの作業を丁寧に行いましょう!
現代のマスタリングと絶対に最初に覚えておきたいマスタリングのいくつかのコツ
現代のマスタリングは、第一章で紹介した昔の「最終的なリスニング体験の向上」という役割とは目的が違ってきており、写真の例えで言うところの「最終的な色調やコントラストを調整」だけがその目的となっています。
その理由は、最近のメディアの多くは「自動音量調整」の機能がついているため「音量の調節などの凹凸を無くす」という目的がなくなったことに加え、昔とは違い「リバーブ(空気感を調整するエフェクト)」などもミックスの段階で使用するため「大きな質感の違い」も無くなったからです。
では「マスタリングではどんなことを行っているの?」というところですが、
- 楽曲の音量を上げる
- 音量を上げたためイメージと離れてしまった部分の最終調整を行う
この2つです。特に大切な方は2つ目の「最終調整を行う」の部分です。
例えば、ミックスでは綺麗に馴染ませることが現代の主な目的のため「聴かせたいところをブーストする」よりも「いらない部分をカットする」ことがプロの間でも共有される基本的なやり方です。「基本的」というのは大きくブーストすることはあまりないですが、軽いブーストなら行うことがあるためです。
このようなミックスを、-12db付近からスタートするため「ミックスが終わった音の音源=2MIX音源」の音量を上げたときに「低音が足りない」「高音部の抜け感がもう少し欲しい」などの改善案が見られるようになってきます。ここを補ってあげるのが主に「マスタリング」の役目になります。この調整方法には主に2つのやり方があります。
- ステムから調整:ミックスが終わった音源から、各楽器のまとまった音源を個別に書き出し、まとめて新規ファイルに取り込んで調整する方法
- 2MIXから調整:ミックスが終わった音の音源そのものを調整する方法
「ステム」とは、例えば「ドラムセット」「ギター類全部」「ストリングス全体」など、書くパートを大まかにひとくくりにまとめたものです。
ステムからの調整だと、各楽器類から調整できるためより細かい調整ができますが、間違ってしまうと前段階のミックスの良さを消してしまう可能性があります。また、2MIXからの調整になると全体を一気に調整するため、ミックスの良さを損なうことはありませんが、上手に調整しないと楽曲そのものが聞きづらくなるデメリットもあります。
結局どっちでやればいいの?と思うかもしれませんが、これは迷うことなく「2MIXから調整」です。理由はそれがプロの間でも一般的であることと「Ozone」というAIマスタリングが使用できるためです。
先程の説明を見て「どっちの方法でも繊細な作業を必要とするんだな」と思っていただけたかと思いますが、まさにその通りでプロの間では「作曲とミックス」どちらも行える方は多いですが「マスタリングは専門の方に任せる」ということが多いくらい難しい作業です。
そのため、プロの間でも主流になってきているものがiZotpeというメーカーから販売されているAIマスタリングプラグインの「Ozone」です。これは、楽曲の一番音量の高い部分を数秒間聴かせるだけで、楽曲全体の最終調整と音量アップを一回で行ってくれるプラグインですが、精度がとても高く「Ozone」があれば基本的なマスタリングはそれだけでいいとも言われるほどです。
先程「最終調整を行う」を行う方が大切と記載しましたが、その理由は「音圧と音量の繊細な調整が必要なくなったから」です。過去には音圧と音量は高ければ高いだけ良いという風潮もあり、この部分において「低音が割れてて音量が上げられないから0.〇db調整して...」など繊細な作業が必要でしたが、昨今では先程記載した通り「各メディアが自動音量調整機能」を導入したため、ここにこだわる必要がなくなりました。
そのため、筆者も使用していますが「マスタリングを極めたい!専門家になりたい!」という訳で無ければ、Ozoneを使用する方が「無難な音源=聴き手側が違和感なく聞ける音源」になるため、基本的な内容や方法、コツを知ったうえでOzoneを使用するのが、初心者の内は最もいい方法と言えると思います。
「最初の内は」と記載されると少し違和感を覚えるかもしれませんが、あくまでマスタリングは「最終工程」ですので、ここで音源が良くなるかは、前段階の「ミックス」にかかっています。加えて、マスタリングは何度も記載しているようにプロの間でも基本的には兼業しない「専門的な知識」が必要な分野でもあります。
ですので、この部分にこだわるよりも、最初の内はミックスをしっかり行うことが重要ですので、マスタリングはOzoneに頼るのが一番現実的な方法です。
まとめ
今回は「MIXって何をするの?」という根本的な疑問からマスタリングとの決定的な役割の違い、加えて、現代のミックス・マスタリングで注意したい、最終的なクオリティーを左右する「基本的な操作」のコツまで一挙に解説しました!
最後に、この記事の最重要ポイントを振り返ってみましょう!
- ミックスの本質: 楽器の音量とパンを丁寧に整え「綺麗な写真」に仕上げる最重要工程。エフェクトをかける前の、この二つのバランスがその後のクオリティーを左右する最重要項目!
- マスタリングの本質: 出来上がった2MIXの最終的な質感や全体の音量を微調整する「色彩調整」の工程。
- 現代の必勝バランス: 各メディアに自動音量調整がある現代では、無理に音圧や音量を上げる必要がない。マスタリングは精度の高いなAIプラグイン「Ozone」に任せ、前段階の「ミックス」を丁寧に行うことがクオリティーアップへ道!
どんなに良いマスタリングツールを使っても、前段階のミックスのバランスが良くなければ聴き手側にとって違和感のある音源になってしまいます。マスタリングで曲が化けるかどうかは、ミックス次第と言っても過言ではありません。
プラグインは使用しただけで「音が変わった!」と明確に分かるようなものばかりですので、最初からたくさん使用したい気持ちはよくわかりますが、その気持ちを抑えて「まずは、フェーダーとパンだけでどこまで綺麗に、違和感なく聴かせられるか」に重点を置き、基本的なところから自身のレベルを底上げしましょう!その地道なステップこそが、あなたの楽曲のクオリティをプロの領域へと引き上げる最大の武器になります。