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ミックスをはじめると、一番最初に使うエフェクトが「EQ(イコライザー)」ですよね!
しかし、EQにはさまざまな種類がありますし、どの周波数帯をどのように調整すればいいかの判断は難しく、結局のところ「なんとなくプリセットだけを選んで使っている」という方も多いのではないでしょうか。その結果、
- 「各楽器の単体の音は良くなった気がする」
- 「けど、最終的に全く音が混ざり合わない……」
と悩んでしまうのは、DTMでは初心者・中級者に関わらず、よく起きる現象です。
そこで今回は、ミックスの際の究極のEQ活用術として、ミックスが専門である筆者が今日から実践できるEQの使い方や、種類の活用方法を解説します!
ミックスにおいてEQは、楽曲の最終的なクオリティーに大きな差を生み出す最重要エフェクトです。本記事の内容を熟読し、今日からの制作に活用して、ワンランク上の「綺麗に混ざり合うミックス」を目指していきましょう!
デジタルEQ・アナログEQという仕様の違い
DTMで使うPC用EQプラグインには、大きく分けて「デジタルEQ」と「アナログEQ」の2種類があることを知っていますでしょうか?この2つの決定的な違いを知っておくだけで、EQの使い方は劇的に変わりますので、まずはそれぞれの特徴を整理しておきましょう!
- デジタルEQ: 録音されたデジタル信号をそのまま処理するため、原音を壊さず、狙った帯域を1Hz単位でピンポイントに微調整できるEQ
例. 「DAWの純正EQ」や「FabFilter/Pro-Q3」など - アナログEQ: 実在する機材の「独特の音のキャラクター」や「音楽的な歪み・音の変化の具合」を再現したシミュレーションEQ。
例. 「SSL」「NEVE」「Pultec」など
皆さんが「音が良くなった!」と感じる方は大抵の場合「アナログEQ」の方で、その理由は上記の説明の通り「名機」と呼ばれた機材の音のキャラクターの再現が自分の音に付与されるためです。
EQで音が馴染まない本当の理由
アナログEQはつまみを回した時の周波数帯などの変化を目視することはできないため、具体的な変化量を見るためには「アナライザー」という別の機材やプラグインが必要になります。そのため「なんか良くなったけど、最終的に馴染まない」という現象が生まれてくるわけです。
もちろん、アナログEQも素晴らしいところはたくさんあるのですが、プリセットを卒業して「より馴染む音を作りたい場合」は「デジタルEQ」を使用して整えた後にアナログEQで音のキャラクターを付与する方法がおすすめです。
EQの種類の違い
先程はEQの仕様の違いを確認しましたが、EQには大きく分けて3種類のEQがありますので、その違いを確認し、最初に使うべきEQの種類とその理由を見ていきます!
グラフィックEQ

セミ・パラメトリックEQ

パラメトリックEQ

①:グラフィックEQ
グラフィックEQは各周波数帯がバンド(まとまり)になっており、必要な部分を上げ下げするタイプのEQです。ミックスの現場というより、音響の現場で使用されることが多いため普段は使用しなくても問題ありませんが、こういったものもあるのだなと覚えていただければと思います!
②:セミ・パラメトリックEQ
グラフィックEQでは、バンド単位で操作していたため、変化が欲しかった周波数帯の近くもまとめて変化してしまうというデメリットがありました。そのため一つの周波数帯を変化させた際に、他の周波数の変化をどれくらい緩やかに変化させるかという「Q幅」という機能を追加したのが「パラメトリックEQ」です。皆さんがDTMで「アナログEQ」と聞くと想像するツマミ式の機材の多くが、この構造を持っています。
元々は、このタイプがパラメトリックEQと呼ばれていましたが、現代のDTMのデジタルEQの方が「Q幅」なども視覚的に分かりやすくなったため、現代ではセミ・パラメトリックと紹介されることが多くなりました。
③:パラメトリックEQ
- どの周波数帯域を
- どのくらいのQ幅で
- 何dbくらい変化させるか
この3点を全て視覚的に判断できるのが、パラメトリックEQです。DTMでデジタルEQと聞いて、多くの方が想像するタイプのEQです。
音を綺麗に馴染ませる「EQの超本格的な3つの実践テクニック」
ここまで読んでいただいた方は、EQの仕様や種類について理解が進んだことと思いますが「結局、何のEQをどのように使えばいいの?」というところが気になっているかと思います。
結論から言うと、綺麗に音を馴染ませるために最初に使うべきEQは「デジタルタイプのパラメトリックEQ」になります。
では「デジタルタイプのパラメトリックEQ」の具体的な使い方や、EQを使用する際のコツを実際の画像や音源を確認しながら、3つのステップでご紹介します!
EQの本格的な実践方法①:Q幅を狭めにして違和感のあるポイントを探す
パラメトリックEQの真価は「周波数帯を見ながらQ幅を自由に設定できる」ことです。最初は慣れなく大変かと思いますが、今から紹介する方法を数回使うだけでも何となく使い方が分かってくるかと思いますので、感覚的に理解した後は各楽器の周波数帯などを調べ、活用していきましょう!
まず押さえておきたいのは、「Q幅」という概念です。
Q幅とは「1つの周波数帯をいじったときに、他の周波数帯に影響する幅」のことです。
では、実際にQ幅による周波数帯への変化を見ていきましょう。
Q幅広め

Q幅狭め

これはどちらも、赤い点の部分は大体同じ様な周波数帯をブーストしていますが、Q幅広めの方の画像は影響する範囲が「約300Hz~約6kHz」付近ですが、Q幅狭めの方は影響する範囲が「約1.2kHz~約1.6kHz」付近と極端に影響する幅が狭くなっていることが分かります!
この様に他の周波数帯への影響を変えることができる「Q幅」ですが、楽器同士をうまく馴染ませるためには、
- Q幅を狭くし
- 最大限までブーストし、変化させる周波数帯を変えて
- 違和感のあるポイントを探す
この3点が大切です。では、少し極端にはなりますが、違和感を探していくとどうなるのかをドラム音源を使用して確認していきます。まずは通常の音源を聞いてみましょう。
ローカット・ハイブースト

ハイブースト・ローカット

音源と画像を同時に比較すると、全然質感が違うことが分かります。この例は極端に違いを出すために「Q幅を広めに設定し、帯域のカット」も行っていますが、通常は「Q幅を狭く設定し、ブーストして違和感を探す」作業を行ってみてください。
ここで出た違和感をどう処理するかは、次の章で紹介しますが、まずはこの違和感を探すことができるようになるのが「音を綺麗に馴染ませる」ための最初の一歩となります。
EQの本格的な実践方法②:ミックス時はEQは「カット」のために使おう!
EQ(イコライザー)は基本的には、レコード・蓄音機・テープなどの録音時に音が原音より劣化してしまう場合に「元の音と同じにするため」に使用されていた機材でした。ですので、各周波数帯を「ブースト・カット」する機能が付いています。
ですが、現代では基本的に録音した段階で「大きな音の劣化」はあまり起きないですよね?そのため「ミックス=音を綺麗に馴染ませる」とミックス自体の役割が昔と変わった現代では「この楽器だけはこの楽曲でどうしても目立たせたい」ということや「距離感的に後ろに配置したけど音は前に抜けてきてほしい」などの明確な理由がない場合には、ミックス時に「ブースト」は基本的に使用しません。
そのため、一度は耳にしたことがあるかもしれませんが「ミックスは引き算」と言われるようになった訳です。
先程の章でご紹介した「違和感」を探し当てた場合は、基本的に「その違和感のある帯域を原音と大きく違いが出ないようなQ幅でカット」することが肝になります。
この方法で行っていくと、基本的にはカットばかりで各帯域がスカスカにならない?と心配するかもしれませんが、その部分は次の章で紹介することを行うと解決できる場合もある他、マスタリングの段階で調整ができるため、あまり問題になりませんので、どんどんカットしていきましょう!
一点だけ気を付けて置きたいのは「デジタル信号的には±6db」「体感的には±10db」で音量が2倍変わって聴こえるということです。パラメトリックEQには「何db変化させるか」という値も見れますので、この数値を超えてしまうと極端な編集になってしまいます。まれに、どうしてもその帯域が絶対に必要の無い場合は過剰なカットを行うこともありますが、基本的には極端な編集は聴き手側に大きな違和感を与えてしまうため、この数値は必ず覚えて置き、意識しながら作業してみましょう!
EQの本格的な実践方法③:デジタルEQを使用した後にアナログEQを追加で使用する
デジタルEQでいらない帯域をカットすれば、それだけでも十分にクリアで綺麗なミックスになりますが、やはり「プロの音源のような、名機特有の温かみや音楽的な音のキャラクターが欲しい!」と思いますよね。
事実、市販の楽曲のほとんどで「デジタルEQだけ」でミックスが終了している楽曲は多くありません。
そういう場合は「デジタルEQで音を整えた後に、アナログEQで音のキャラクターだけ付与する」というやり方がおすすめです!
「せっかくデジタルで綺麗に整えたのに、後からアナログEQを通したらまたバランスが変わっちゃうのでは?」と思うかもしれませんが、全然問題ありません!ミックスでは、EQの後にコンプレッサーやリバーブ、テープシミュレーターなどの様々なエフェクトを使用するため、最初に整えた音はどうしても少しずつ変化してしまいます。
その場合「多段EQ」と呼ばれる方法ですが、様々なエフェクトを使用した後に、EQの元の役割として使用するように、エフェクトの最終段にもう一度アナログEQを使用し、最初に整えた音と同じに聴こえるように整えてあげればいいだけです!
まとめ
今回は、音が綺麗に馴染む「究極のEQ活用術」と称して、EQの仕様・種類の違いからプロ直伝の実践テクニックまで、EQについての大切なことを網羅して解説しました!
最後に、今回の重要なポイントをもう一度おさらいしておきましょう!
- デジタルEQとアナログEQの役割を使い分ける
- 最初は「デジタルタイプのパラメトリックEQ」を使う
- Q幅を限界まで狭めてブーストし、耳を澄ませて「違和感のあるポイント」を探す
- 現代ミックスは「引き算」が基本。違和感のある帯域をピンポイントでカットする
- エフェクトでバランスが変わったら「多段EQ」で最初に製作した元の理想の音へと整え直す
ミックスは細かく繊細な作業を必要としますが、作業内容自体は作曲などとは違い、地味なものが多いので、どうしても「音が一瞬で派手になるプリセット」などを使用したくなる気持ちは分かります。ですが、画面に見えないまま感覚に頼ってしまうそのやり方こそが、音が綺麗に混ざり合わない最大の原因です。
音楽は「感覚派」と呼ばれる方もいらっしゃるので、どうしてもその言葉がかっこよく見えてしまいがちですが、プロの中で言う「感覚派」とは、しっかり数値でも見れた上で、最終的にはこの質感の方が良いよね!という両方を理解できていて、最終的には今までの感覚で決める。という方のことです。
最初のうちは数値を見ながら「違和感のあるポイント」を見つけるのが難しく感じるかもしれませんが、ドラムやボーカルなど、お気に入りの音源で数回試していくうちに、必ず耳が慣れて分かってくるようになり、最終的には楽曲全体で見違えるほどクオリティーが上がったと感じるはずです。
ミックスの中でもEQは特に、地味で繊細な作業ですが、ぜひ本記事の数値を意識しながら今日からの制作にフル活用していただき、ワンランク上の「綺麗に混ざり合う最高のミックス」を完成させていきましょう!