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DTMで楽曲制作が終了し、ミックスの作業に移行した際に、EQやコンプのかけ方など様々難しい点はありますがその中でも特に難しいのが「リバーブのかけ方」ですよね!
リバーブは様々な効果を期待できる奥が深いエフェクトですが、一番浸透している説明は「楽器の距離感を整えるもの」というものですよね!空間系エフェクトと言うだけあって、この説明は間違っていません。
ですが、どれだけリバーブの設定を変えても「距離感」という要素が掴めないと悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
ここで「そうなんだよね....結局距離感って何?」と思った方は、本記事を最後までご覧ください!実はひとえに「距離感」とは言っても、その要素を左右するのはリバーブだけではないため「分かったようで分からない」状態が起きているんです。
本記事では、本当の距離感の作り方をリバーブ以外の要素からも解説し、最終的に本当に有効な距離感を作るリバーブの使い方を解説していきます!距離感を上手に設定できると、今まで見えてこなかった余白やEQ/コンプなどの他エフェクトの設定も見直すことができ、最終的なクオリティはー段違いになります!
距離感を出すのはリバーブだけじゃない
ミックスの際に、楽器同士の距離感を出すために必要なのはリバーブだけではありません。
リバーブは「基本的観点から整えた」距離感に立体性を付けたし、より確かにするためのエフェクトと言うイメージです。
距離感を整える際の「基本的観点」とは具体的に以下の2点の要素のことを指します。まずはこれらの項目を確認し、それぞれ解説していきます。この部分は特に、DTM歴の長い方でも見落としやすい考え方ですので是非覚えておいてください!
- パン=横の距離
- 音量=奥行き
この様に考えておくと、リバーブの深い認識や本記事の内容の理解にも役に立ちます。
リバーブはこの距離に対して「空間の広さ」や「壁までの距離」等を加えることで「立体感」を出すイメージです。では、この2つの距離がミックスにどのような影響を与えるか、個々に確認していきましょう!
パン(PAN)=横の距離
パンは「ステージ」を考慮した際に「楽器をどのポジションに配置するか」を数値的に配置する機能です。基本的に数値は左右(L/R)にそれぞれ0〜100で表され「0」は「C(センター)」という表記になります。分かりやすく、実際のステージを想像してみましょう。
- オーケストラの場合: 客席から見て一番左側には、基本的にヴァイオリンが並んでいるイメージがありますよね!そのため、ミックスでも左側(L側)に配置します。
- バンドの場合: ライブハウスで正面を見たとき、ボーカルはバックコーラスでない限りは、ステージの中心に立っていることが多いですよね!そのため、ボーカルのパンは「0(センター)」に配置します。
という具合です。
ここまでは想像が付きやすい範囲かと思いますが、実はこの「広さ」を「数値」で表してしまっていることにより、見落としがちな落とし穴があります。それは「ステージの広さは全てが同じではない」と言うことです。
何を当たり前のことを当然のように言っているの?と思うかもしれません。そこで質問ですが、例えば「少人数のジャズやロックなどの楽曲」と「フルオーケストラのゲームBGM」があったとして、それぞれの楽曲で「一番端にいる楽器はとりあえずパンを100まで振る」という設定をしていませんか?ここでギクッとした方も多いはずです。
「100」という数字に惑わされてしまいがちですが、この「100」を「ステージの広さの最大値」と言い換えてみて下さい。
つまり「世界最大級のコンサートホール」の広さが「左(L)100~右(R)100」までの範囲と考えた時、ライブハウスの広さはそれよりも小さくなりますから、抽象的な例えにはなりますが「左(L)65~右(R)65」などになるはずです。
このように「基本的」には全ての楽曲やジャンルで同じように無理に100まで左右いっぱいに配置する必要は全くありません。ですので、上手な空間を作る上では、自分が制作した楽曲を「ジャンルや編成」から逆算し、想定した空間を「横幅で理解できる」ことが大切です。
「基本的」と記載したのは、あくまでこれは「自然な空間」を作り出すために適した考え方であり、音楽的機能を考えた場合には違う配置が必要になる場合があるからです。一番イメージしやすいのはベースの配置です。
ベースは実際のステージでは必ずしも、真ん中の定位置にいるわけではありませんが、音楽的機能として「バスドラムと一緒にその楽曲のリズムやグルーブ(ノリ感)キープする」役割があります。そのためバスドラムと同様に「0(センター)」に配置するのが一般的です。
また、シンセサイザー等の元々自然ではない楽器を多用する場合は、楽器の数が30個以上と言う大きい編成になることも少なくありません。そのため、それぞれの楽器が入る空間を作るために、ジャンル的には広さが必要のない楽曲でも、パンを最大限まで使用することもあります。
この様にパンの設定はただ何となくで広げず、まずは想定した空間を「横幅で理解」し、次に「音楽的機能の観点」から設定することが最も大切です。
音量=奥行
この「音量=奥行き」という部分は、先ほどのパンのように複雑な話ではなく、すごく単純な話です。
極端な例ですが「耳元で大声で話される」のと「遠くから小声で話される」のでは、どちらの方が近くに感じるでしょうか? もちろん「耳元で大声で話される」方ですよね!
この時点で、すでに「耳元」と「遠くから」という「空間の奥行き(前後感)」の話が出ています。
これはミックスでいうと「音量バランス(フェーダーの位置)」そのものと言い換えることができます。 つまり、音量が大きいほど「近く(手前に)」聞こえ、音量が小さいほど「遠く(奥に)」感じさせることができます。
- パン(=左右の距離)で横幅を決める
- 音量(前後の距離)で奥行きを作る
この「基本の2つ」のベースがあって初めて、リバーブによる「実際の空気感や壁までの距離の設定」が100%の効果を発揮し、本当の「距離感/立体感」が生まれることになります。
では、この土台を踏まえた上で「リバーブの選び方」と「リバーブのかけ方」という題材に入っていきましょう!
リバーブの選び方
リバーブにも「ホール」や「スタジオ」など多くの空気感がありますし、ネット上では「リバーブは複数使わないと意味がない」など、リバーブに対する議論も複数あり、結局のところどのように選んでいいか分からなくなってしまいますよね。
ですが「複数のリバーブを使う」というのも「何故そうしなければならなかったか」と言う風に分解して考えると意外と単純なものだったりしますので、それぞれ解説していきます。
単体:リバーブの選び方
リバーブの選び方はすごく単純で「実際に演奏されている風景」を想定して選ぶのが大切です。例えば「オーケストラならコンサートホール」「バンドならライブハウス」といったイメージです。
ですが、一口にコンサートホールと言っても、その中にはさまざまな違いがありますよね。
- ホールの大小
- 響き方の違い
- 残響の違い
- 壁までの距離
これらをリバーブの「種類・機能」を選択して以下のように調整することで再現します。
- 「ホールの大小」「響き方の違い」 ➔ 「リバーブの種類((ルーム、ホールなど)」を選択して決める
- 「残響の違い」 ➔ 「リバーブの深さ・時間(どのくらい長く残響を残すか)』で調整する
- 「壁までの距離」 ➔ 「プリディレイ(原音が鳴ってから最初の残響音が返ってくるまでの隙間の時間)」で調整する
これは、1つのリバーブを選ぶ時の考え方です。では「複数のリバーブを使う場合」はどのように選択していくかを解説していきます
複数使用理由①:「楽器が録音されたときの空間」と「実際の演奏が想定されている空間」が違うため
皆さんが気になっている「リバーブを複数使用する意味」ですが、ミックスをする段階で、楽器は「スタジオで録音されたという過去の空間」と「最終的にどういうステージで演奏されたイメージを聞かせたいかという未来の空間」の2つの空間があります。この空間を上手くつなぎ合わせるためには「リバーブを複数使うしか方法がない」というすごく単純な理由です。
宅録では「ライン録音(=空間を使用しない録音)」が主流のため、過去の空間である「スタジオの空気感」を後から足してあげる必要があります。これがリバーブを複数使用する際の最初の工程です。
よく、リバーブは音を馴染ませる「接着剤」の役割もあるという説明を目にしますが、この表現は惜しいなと思っています。正確には「空間の質感を揃える」と捉えてみて下さい。
例えば、ドラムセットの中で「スネアは広いホール」「バスドラムは狭いスタジオ」「ボーカルはお風呂」のようにバラバラのリバーブをかけてしまうと、部屋の質感が違うため、どれだけその他の要素を整えても「バラバラで混ざり合わない音」になってしまいます。
これを「まとまりのある音」にするためには「ドラムセット全体がスタジオで録音されている」ことを想定し、ドラムセットの全ての楽器にルームリバーブなどの余韻が短いアンビエント系のリバーブを使用します。これがいわゆる「接着剤」の役割です。
その後、楽器全体を整える際に「最終的にどういうステージで演奏されたイメージを聞かせたいか」を調整するために、2つ目のホールやプレートリバーブなどの余韻が長いリバーブが必要になります。
この様な理由から「複数のリバーブを使用する」という現象が起きるわけです。
複数使用理由②:各楽器を目立たせるため
先程は「過去の空間」「未来の空間」と置き換え、複数のリバーブをかける理由を説明しましたが、実は「ルームリバーブなどの一つ目にかけるリバーブは各楽器で同じものを使用しない」ことで、各楽器を少し目立たせることができます。
①の章の例の様に「ドラムセット」や「サイドギター・バッキングギター」など「同じ種類の楽器で同じリバーブ」を使用することは「接着剤」として有効な使い方です。しかし、その一方で「ドラムセットもギターも同じリバーブ」になると、同じ空気間の中で音の余韻が混ざり合いアタックが弱く聞こえる場合があります。
もちろん意図的にこの効果を得たい場合は問題ないですが、各楽器をよりしっかり聞かせるためには
- ドラムはドラムのリバーブ
- ギターはギターのリバーブ
- 鍵盤楽器は鍵盤楽器のリバーブ
など、それぞれ専用のものを用意してあげることがポイントになります。
では、楽曲全体の接着剤はどうするの?という点ですが、それは最後に全部の楽器にかける「最終的にどういうステージで演奏されたイメージを聞かせたいか」を調整するための2つ目のリバーブが全体を馴染ませてくれる効果があるため心配はいりません。
複数使用理由③:効果音的に使うため
リバーブのほとんどは、部屋の空気感を再現したものですが、実は「スプリングリバーブ」というバネに音が響いたときの余韻を再現する特殊なリバーブもあります。ギターを演奏している方はストラトキャスターですと、背面にスプリングが入っているのでイメージしやすいかもしれませんね!
その様な特殊なリバーブは「接着剤」としてではなく「効果音」として隠し味的に使用されることがありますので、これもリバーブを複数使用する理由の一つです。
「複数のリバーブを上手に使う」という言葉だけだと複雑に感じますが、このように一個一個をしっかり確認してくと「意外とそんなものなだったの?」と思うくらい分かりやすい内容でしたよね!
これで今日から複数のリバーブを上手に使用することができると思いますので、さっそく試してみてください!
また、リバーブだけではないですが、難しく感じる技術でも分解して考えることでそれを行う必然性が見えてきますので、普段の「なぜ?」を大切にし、気にかけながら様々な作業を行うクセをつけることも大切です。
遠近感を出すためのリバーブのかけ方
これまでの章で「横の距離感はパンで」「奥行きは音量で」調節し、加えてリバーブの選び方が理解できるようになった訳ですが、では最後に「どうやったら立体感が出るの?」という疑問が残ります。
本記事内で、リバーブは「部屋の空気感を足す・立体感を出す」という表現をしてきました。実はこの「立体感」という部分がリバーブを上手に使用するためのキーワードです。
これも個々で見ていくととても分かりやすいので「奥行きの立体感」と「横の立体感」の2つの視点から解説していきます。
立体感を出す①:奥行きの立体感
この部分に関しては実はとてもシンプルで「音量が大きい=耳までの距離が近い楽器」のリバーブは少なく「音量が小さい=耳までの距離が遠い楽器」のリバーブは深めにかけることがポイントです。
イメージとしては、遠くから大声で声をかけられたとき、音が空気中に散らばって言葉の端々がモヤっと聞こえるような感じと同じものを再現してあげるという形です。
立体感を出す②:横の立体感
この「横の立体感」もイメージ的には簡単ですが、リバーブをかける量以外に「プリディレイ」という項目を使用します。
プリディレイとは専門的には「原音が鳴ってから最初の残響音が返ってくるまでの隙間の時間」という意味を持ちますが、簡単に言い換えると「壁までの距離」になります。
例えばリバーブをかける量は同じだったとしても「パンが0」だった場合、その楽器はステージの真ん中にいるわけですから壁までの距離が遠くなります。逆に「パンがL100」だった場合、その楽器は最も左側にいるわけですから、左の壁までの距離が近くなります。
プリディレイは数字が大きくなるほど、壁からの距離が遠いことを表しているため、奥行きの立体感に加え、プリディレイの数値を調整することで左右の立体感も出すことができます。
この項目まで理解できていれば、リバーブの「奥行きや立体感を出す」という部分の知識では困ることは少ないはずです。
ですが実際のところは、知識だけで上手に設定することはできません。市販の音源や実際のステージの響き方を細かく研究し、実際に自身で触って追及し、実践していくことが大切になりますので、本記事を読んだ今日から実践してみるようにしてください!
まとめ
最後に、本記事で解説した「本当に有効な距離感の作り方」を振り返って整理してみましょう!
- 距離感の7割は「パン=横の距離」と「音量=奥行き」のバランスで決まる
- リバーブの役割は、その2つの土台に対して「部屋の立体感」を追加すること
- 複数使いの理由は、楽器をレコーディングした際の「過去の空間」と聴かせたいステージの「未来の空間」を接着するため
- 奥行きの立体感は「リバーブの量」左右の立体感は「プリディレイ」を上手に設定する
リバーブは効果音的にも、音響的にも使用できる奥が深いエフェクトです。ですが、奥が深いが故に、しっかり理解し、しっかり実用できることが楽曲の空気感を大きく左右する重要なポイントになりますので、楽曲を作り始める時から「ビーチの海の家」や「コンサートホール」など演奏を聴かせたい空間を逆算でイメージし、実際に接着剤や立体感を出すために使用する際は、確かめ算的に使用することがポイントです。
読者の皆様のミックスが、今日から見違えるほど立体的になることを応援しています!